恋愛セミナー27【篝火】第二十七帖 <篝火 かがりび>近江の君を弘徽殿の女御のもとに仕えさせ、笑い者にしている内大臣の心ない扱いを、 源氏は気の毒に思っています。 玉鬘も改めて、何も知らないままに内大臣のもとへ行っていたら 同じような目にあっていたかもしれないと気づきます。 右近も源氏に引き取られたことの幸運を玉鬘にさとすのでした。 玉鬘は、源氏の愛情が深いことをだんだんと感じ取っています。 秋の夕暮れ、和琴を教えるという名目でやってくる源氏。 琴を枕にして寄り添う二人に、それ以上のことは何もないのが不思議なほどです。 庭の篝火に照らされた玉鬘の髪を撫で、美しさを愛でながら源氏は恋を語り続けます。 「篝火から立ちのぼる煙こそ私の絶えない恋の煙。」と源氏。 「煙は消えてしまうもの。恋の煙も空に紛れてさせて。」と玉鬘。 あまりにも長い訪問を見咎められないよう、心を残して帰る間際に、花散里のいる東の方から 夕霧や柏木が合奏する笛などの音が聞こえてきました。 皆を招いて、源氏は和琴を弾き、夕霧は笛を吹きます。 柏木は歌うように言われますが、玉鬘への思いがつのってなかなか声を出すことができません。 代わりに弟の弁の少将が素晴らしい声で歌いました。 源氏が柏木に和琴を渡すと、名人と言われる内大臣に勝るとも劣らない演奏をします。 御簾(みす 貴人の屋敷で使われる目の細かいすだれ)の奥で、実の弟の琴の音を感慨深く聞く玉鬘。 恋心を隠しとおせないような気持ちになりながらも、さりげなく振る舞おうとする柏木なのでした。 恋愛セミナー27 1 源氏と玉鬘 父として恋人として 2 玉鬘と柏木 弟の思いは募る 篝火の火影に揺れ動くそれぞれの思いが、炙り出される帖です。 原文はとても短いのですが、楽の音、玉鬘の髪の肌触り、篝火の煙にたくされた恋歌など、 非常に研ぎ澄まされた感覚で描き出されています。 実の姉に恋する柏木を見て、源氏はただ楽しんでいたのでしょうか? 若き日の、頭の中将たる内大臣の面影を色濃くうつす柏木。 夕霧と柏木は、その父親たちのように良きライバルとして競い合っています。 内大臣が夕霧に辛くあたるのは、源氏の姿を見るからでしょう。 巨大な存在になった父親たちは、次世代にも何か張り合う気持ちを起こさずにはいられない。 それは王家対藤原一族という家同士の単なる敵対心なのか。 それとも、若さという決して取り戻せないものへの羨望なのでしょうか。 後の帖で、源氏の恐ろしいまでの嫉妬が、この若きライバルに向けられてゆきます。 ジャンル別一覧
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